国立感染症研究所・薬剤耐性研究センターは、「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2016-2020):NAP(2016-2020)」(※1)にもとづき、2017年4月に薬剤耐性に関する包括的なシンクタンク機能を担う組織として設置されました。薬剤耐性研究センターでは、国内外の薬剤耐性菌のサーベイランスや、耐性メカニズム研究、薬剤耐性対策に資する新技術開発、病院の感染症対策支援、市場で流通している抗生物質の品質検査等に取り組んでいます。

薬剤耐性菌バンク(Japan Antimicrobial Resistant Bacterial Bank: JARBB)は、NAP(2016-2020)にもとづき、耐性菌分離株の保存と菌株の産官学での利用を推進するために2019年に感染研に設置されました。JARBBでは、当センター独自のナショナルサーベイランス(Japan Antimicrobial Resistant Bacterial Surveillance: JARBS)により収集した薬剤耐性菌株や企業・大学から寄託された菌株を含む約17万株(2021年時点)を収納しています。当バンクでは、それらの菌株の中から産官学での利用推進のための菌株セットを選抜し、「薬剤耐性菌パネル」として提供します。薬剤耐性菌パネルは、主に以下3つの目的を想定しています。

  • 基礎研究パネル:薬剤耐性菌の性状解析・検出法開発等の基礎研究向け。
  • 創薬研究パネル:薬剤耐性菌感染症に対する診断及び予防法・治療薬の開発向け。
  • 精度管理パネル:病院の検査室における精度管理向け。

現時点で提供できるパネルの種類は限られますが、今後随時追加する予定です。実際の使用を検討されている皆様のご意見・ご要望を歓迎いたします(お問い合わせ)。なお当バンクでは、米国疾病管理予防センター(CDC)が運営するCDC & FDA Antibiotic Resistance (AR) Isolate Bank(※2)所有の菌株パネルの日本における分与を行っていますので、こちらもご活用ください(Antibiotic Resistance Isolate Bankパネル)。

今後、薬剤耐性菌バンクが十分活用されることにより、日本におけるAMR対策が進むとともに、日本から新たなAMR研究の成果が世界に発信され、新薬の開発・導入につながることを願います。

2022年12月9日 薬剤耐性研究センター・センター長 菅井基行